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5・新たな一歩 Page10

ผู้เขียน: 日暮ミミ♪
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-03-07 10:31:21

「はい。西原先生も参加されるそうです。僕がお声がけしたら、『ナミちゃんが参加するならあたしも!』って。彼女の担当者もこちらに異動するそうです」

「担当の人が異動するってことは、琴音先生はもう〈ガーネット〉からは本出して頂けなくなるってことですか?」

 ……いや待てよ? それを言ったら私もそうじゃないか。担当の原口さんが〈パルフェ文庫〉の編集長になるんだから。

「――ってことは私も? じゃあ、今まで〈ガーネット〉から出して頂いてた作品の版権(はんけん)とか、重版ってどうなるんですか?」

「そうですね……。残念ながら、巻田先生も西原先生も、今後〈ガーネット〉からの刊行はできなくなります。ですが、作品の版権は新レーベルに引き継がれることになってますので、重版ではなく〈パルフェ文庫〉から新たに刊行、という形になります」

「なるほど……、そうなんですね。分かりました」

 私の作家としての原点である〈ガーネット文庫〉からもう本を出してもらえないのは淋しいけれど、私の作品が世の中から消えるわけじゃないんだと分かってホッとした。

 たとえ活動の場が変わっても、私はこの先も作家でいられるんだ。私の夢は、まだ終わらないんだ!

「――というわけで、先生。レーベルは変わりますが、今後ともよろしくお願いします。編集長としてはまだ若いですし、頼りないかもしれませんが……」

 原口さんが改まった態度で、謙遜しながら私にペコリと頭を下げた。

「いえいえ! こちらこそ、これからもお手を煩わせると思いますけど……。とりあえずエッセイのお仕事、頑張ってやらせて頂きます!」

 私もペコリで返す。

 食べかけのパフェは、もうだいぶアイスが溶けてきている。――そんな私のパフェグラスに注(そそ)がれた、原口さんの熱視線に私は気づいた。

「うまそうですね、それ」

 視線が合うと、ニッコリ笑われた。食べたいならもっと早く言えばいいのに。というか、チーズケーキを平らげたのにまだ食べるんかい! ……というツッコミはどうにか堪えた。

「…………え? 私のスプーンでよかったら一口食べますか? だいぶ溶けちゃってますけど」

 私が使っていたパフェ用のスプーンを差し出そうとすると、彼はわざわざコーヒーについていた未使用のスプーン(そういえばブラックで飲んでたっけ)を伸ばしてきてアイスをすくい、口元に運んだ。

 ――ああ、間接
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       * * * *「――ごちそうさま。そろそろ出ましょうか」 伝票を手に席を立ち、会計を済ませようと私がお財布(サイフ)を取り出すと――。「あ、先生。ここは僕が」 原口さんもお財布を出して、支払いを申し出た。作家である私にお金を出させるのは忍(しの)びないらしい。「いいのいいの! ここは私が払います。誘ったの私ですから、ね?」 割り勘(カン)、という手もあったけど、それは私がイヤなのだ。――好きな人に気を遣わせるのが。「……分かりました。先生、ごちそうさまです」 原口さんは私の気持ちを汲んでくれたらしく、素直にお財布を引っ込めた。「――マンションまで送らせて下さい」 喫茶店を出ると、原口さんがそんな申し出をした。「えっ? いいですよ! すぐそこなのに」「僕がそうしたいんです。さっきごちそうになったんで。――お願いします」 彼は意外と頑固だ。〝お願い〟までされたら、私も「イヤ」とは言いにくい。……イヤじゃないし。「しょうがないなあ……。いいですよ」 ――というわけで、私は彼に送ってもらうことにした。「そういえば原口さん。最近私にあんまりイヤミとか言わなくなりましたよね」 私はごく自然に、世間話のつもりでそう言った。「えっ、言ってほしいんですか? もしかして先生って……、実はドMですか?」「ちっ、違いますよっ!」 私は顔を真っ赤にして否定したけれど、完全に否定できたかどうかは分からない。 そういえば、今まではっきり指摘されたことがなかったから自覚はなかったけど。……私って本当にドMだったりするかも?「――あ、着きました。本当にすぐですね」 五分も経たないうちに、私の住むマンションに到着してしまった。「それじゃ、原稿用紙は明日にでもお持ちしますね。僕はこれで失礼します。――先生、お疲れさまでした」「はい。送ってくれてありがとうございました」 原口さんの背中を見送ってから、私はマンションの階段を上がった。二階の部屋に着く頃にはいつもクタクタなのに、今日はいつになく清々(すがすが)しい気持ちで、足取りも心なしか軽かった。「ただーいま」 鍵を開けると玄関でスニーカーを脱ぎ、誰もいない室内(一人暮らしなんだから当たり前だ)に一声かける。――これは潤が入り浸っていた頃に身についてしまったクセというか、習慣というか。 いつ

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-10
  • シャープペンシルより愛をこめて。   5・新たな一歩 Page12

    『――はい、巻田です』「もしもし、お母さん? 奈美だけど」『ああ、奈美?』 母の声はいつも優しい。作家デビューが決まった私が「家を出る」と言った時も、母は「そう。頑張りなさい」って背中を押してくれた。私の一人暮らしにあまりいい顔をしなかった父を説得してくれたのも、母だった。『元気にしてる? お仕事はどう? ちゃんとゴハンは食べてるの?』「うん、元気だよ。ちゃんと自炊してるし、作家の仕事もバイトも大変だけど楽しいよ。毎日すっごく充実してる」 毎日楽しくて充実しているのは、きっと今恋をしているからだ。――いつか母にも話せるといいな。『そう、よかった。――お父さんがね、今月出た奈美の新作、予約してまで買ってきて。今じゃすっかりハマってるのよ』「へえ……」 父も丸くなったもんだ。昔はあれだけ「夢だけじゃ食べていけないぞ」とか言ってたくせに。でも正直、そんな父の変化が私は嬉しかった。『――ところで、今日はどうしたの? 電話くれるなんて珍しいじゃない。何か困ってることでもあるの?』 母が不思議そうに訊いてきた。「えー? そんなことないでしょ? コマメに連絡はしてるじゃん」『メールとかメッセージではね。でも、電話はたまにしかくれないじゃない』「あー……、そうかも」 母の指摘はごもっともだった。困った時だけ電話して、あとはメールやLINEばっかり。これじゃ言われても仕方ない。「あー、いや。別に困ってはいないんだけどね。――あのさ、お母さん。今度の土曜日、久しぶりにそっちに帰っていい? あたしバイト休みなんだけど」『いいけど。どうして?』 私が実家に帰りたがるなんてめったにないことだから、母はむしろそっちの方が心配なんじゃないだろうか。「えっと、あたし今日新しいお仕事もらったんだけどね、それが初めてのエッセイの執筆で。昔のアルバムとかあったら、それを資料として使いたいな、って」  これは、自分自身の過去への〝取材〟だ。両親以外にも昔の友達とか学校の先生とかにも話を聞こうと思っている。『新しいお仕事って、あんたこないだ新刊出たばっかりじゃなかったの?』「うん、そうなんだけど。色々と事情があって……」 原口さんが私にこの仕事を依頼したのは、蒲生先生に対する意地もあったのかもしれない。――自分が担当している中で一番若い作家の私に、原稿を書き上

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    『――分かった。いいわよ。今度の土曜日、待ってるから。お父さんも奈美に会いたがってたから、二人で待ってるわね』「うん! ありがとね、お母さん!」 通話を終えると、私はスマホとバッグを手に部屋に入った。 着替えて夕飯(ゆうはん)を済ませたら、久しぶりに電話してみようと思っている友達が一人いる。高校を卒業(で)てから進路が別れ、しばらく会っていないのだ。「――さて、今日の夕飯は何にしよう……」 楽なスウェットの上下に着替えた私は、キッチンで冷蔵庫を開け、中身をチェックし始めた――。   * * * * ――翌朝の出勤前、原口さんがわざわざマンションまで原稿用紙を届けてくれた。 慌(あわ)ただしい時間だし、朝早くに来てもらうのは(色~んな意味で)彼には申し訳ない。来てもらうのは夕方でもよかったけど、原稿用紙は早く受け取った方がモチベーションが上がる。「とりあえず、予備の分も合わせて三百枚お渡ししておきます。足りなくなったらまた僕にご連絡下さい」「〝足りなくなる〟ってことはないと思いますけど。私の場合は」 私の場合、確かに〝手書き〟だけど使っているのはシャープペンシル。修正や書き直しの時にも消しゴムで消して書き直せるので、〝間違えたら丸めてポイッ〟はないと思う。「まあ、僕もそう思いますけど念のため。余(あま)った分は次の作品の執筆にも使えますから」「そうですね。ありがとうございます。じゃあ、執筆頑張ります!」 私は作家の〝生命(いのち)〟ともいえる三百枚の原稿用紙を受け取り、これから洛陽社に出勤するという原口さんを玄関先で見送った。 一枚一枚に「巻田ナミ」と名前が入っている洛陽社の原稿用紙は、私の作家としての誇(ほこ)りだ。私専用の、他の人は使うことを許(ゆる)されない原稿用紙だから。   * * * * ――その日から土曜日までの数日間、私はバイトに励みながらエッセイの内容について構想(こうそう)を練(ね)り始めた。 書きたいことは山ほどあるけど、それを原稿用紙二百五十枚(十万字)の中に収める必要があるのだ。 何より、この仕事は新レーベル〈パルフェ文庫〉の編集長となる原口さんのスタートを飾(かざ)る仕事だから、そういう意味でも絶対にいい作品(モノ)を書き上げたい。そう思うのは、もちろん物書きとしてのプライドもあるけれど、彼への恋心が

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-10
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    「――やっぱり、私の生(お)い立ちとか作家デビューまでの経緯は書くべきだよね。あとは恋愛遍歴(へんれき)と、私がいつもどんな風に原稿を書いてるか……かな」 書きたいことの大まかなテーマを、呟きながらプロット用のノートに箇条(かじょう)書きでメモっていく。ここからさらに取材を重ね、プロットを作るのだ。 原口さんに電話で「どんなことを書けばいいですか?」と訊いたら、彼の答えはこうだった。『内容は先生にお任せしますので、お好きに書いて下さい。……ああでも、一応恋愛モノメインのレーベルなんで、恋愛絡みの内容を入れて下さった方が……』 ―― そう言われても、二十三年間ろくな恋愛をしてこなかった私には、読者が喜んで飛びつくようなトピックスがほとんどない。 となると、読者の興味を引く内容は筆者である私自身の私生活や創作にまつわるエピソード……だろうか。 私がシャープペンシルで執筆していることは、実は読者さん達にはあまり知られていない(由佳ちゃんみたいに個人的に親しい間(あいだ)柄(がら)の人は知っているけれど)。今どきの若者でもある私がこんなアナログ作家だと知ったら、読んでくれた人はビックリするだろうか……?「そうだ!」 そう思った時、このエッセイのタイトルがフッと降(お)りてきた。 見ただけでネタバレになりそうなタイトルだけれど、これ以外にピッタリはまるタイトルはないんじゃないかっていうくらい、内容にマッチしていてしっくりくる。「うん、いい! タイトルはこれに決定」 私は独断(どくだん)だけで決定したばかりのタイトルを、メモ書きのページの冒頭(ぼうとう)に書き込んだ。 本当は原口さんと相談してから決めるべきなのかもしれない。でも、それをしなかった理由は、このエッセイを彼へのメッセージにしようと思っているから。 これを書き上げたら、原口さんに告白しよう。――私はこの仕事を引き受けた時から、そう決心していたのだった。

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   6・伝えたい想い Page1

     ――土曜日。私は母に電話した通り、墨田(すみだ)区内に建つ実家に帰った。 この家は二階建ての建(た)て売(う)り物件で、そんなに立派じゃないけれどちゃんとした父の持ち家だ。作家デビューするまでの二十年ちょっと、私はこの家で育ち、大学にもこの家から通(かよ)っていた。 そして、洛陽社からの大賞受賞の連絡を受けたのも、この家でだった。「――ただいま、お母さん!」 帰るのは実に数ヶ月ぶりとなる実家の玄関で、私は出迎えてくれた母に笑顔で言った。 前に帰ってきたのは今年のお正月だった。バイト先である〈きよづか書店〉もちょうどお正月休みで、その頃連載の仕事(今月出た新作の一コ前)を抱えていた私は実家に書きかけの原稿を持ち込んで、自分の部屋で仕事をさせてもらっていたっけな。「お帰りなさい、奈美。お父さんなら居間(いま)にいるわよ」「うん。ありがとね」 私は居間に向かう。母は「お茶でも淹れてくるわね」と台所に消えた。 母は四十八歳。今でも現役(げんえき)で高校の国語教師をしている。父は母の二歳年上で、大学時代の先輩後輩らしい。社会に出てから再会して、付き合い始めたんだとか。「――お父さん、ただいま。久しぶりだね」 居間のソファーに座ってTV(テレビ)を観(み)ていた父は、私が声をかけるとリモコンでTVの電源を落とし、嬉しそうに顔を綻(ほころ)ばせた。「お帰り、奈美! 元気そうで何よりだ」「うん、元気だよ。――ごめんね。お休みの日に、しかもこんな朝早くに」 今は朝の九時半。父も本当はもっとゆっくり寝ていたかっただろうに。私のために早く起きてくれたのだとしたら、ちょっと申し訳ない。「いやいや、気にするな。父さんがな、お前が久しぶりに帰ってくるって母さんから聞いて、楽しみで早く起きちまっただけだ」「そうなんだ?」 私もソファーに座った。居間のカーペットの上には、私がお母さんに頼んであったアルバムが山のように積(つ)んである。大小も、厚みもさまざまだ。「――ああ、それな。さっき母さんと二人がかりで家の中ひっくり返して見つけてきたんだ。大変だったぞ」「そっか……、ありがと。感謝します」 父とは、進路を巡(めぐ)って対立したこともあった。でも私は、父を恨(うら)んだことは一度もない。今思えばあれは、娘が心配な親心からだったんだと思えるから。

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   6・伝えたい想い Page2

    「――お茶が入ったわよー」 母がお盆を持って居間に来た。そして自分と父の前には湯呑(の)みを、私の前には冷たい麦茶が入ったグラスを置く。私が猫舌だということを、ちゃんと覚えていてくれたらしい。「ありがと、お母さん。――あの、アルバムも。大変だったんでしょ?」「娘がいい作品書くためだったら、親ならこれくらいの協力惜しまないわよ。ね、お父さん?」 母に水を向けられ、父も頷いた。「ああ」 私っていい両親を持ったなあ。――そうしみじみと実感しながら、私はグラスの麦茶を飲んだ。「――今日はゆっくりしていけるのか?」「そうよ、奈美。今晩泊まっていったら?」 その両親が、矢(や)継(つ)ぎ早(ばや)に訊ねてくる。「ゴメン、二人とも! 泊まっていくのはムリなの。明日はバイトあるし、今日も午後から予定があって……」「予定って、もしかしてデートか?」「あら! あんた、そんな男性(ひと)いるの?」「いないよ、そんな人っ!」 私は麦茶を噴きそうになった。確かに好きな人はいるけれど、原口さんはまだそんな人(=(イコール)デートする相手)には当てはまらない。――私の中では〝予定〟もしくは〝候(こう)補(ほ)〟ではあるんだけど。「そうじゃなくて、友達に会いに行く約束してるの。――中(なか)野(の)美加(みか)ってコ、覚えてるでしょ?」「ああ、美加ちゃんね? 覚えてるわよ」 美加は私と小・中・高校まで一緒だった幼なじみの親友で、この家にもよく遊びに来ていた。「美加ね、この春から新宿(しんじゅく)の結婚式場で働いてて。今日も出勤してるらしいから、職場まで会いに行くことになってるの」 彼女は高校を卒業後、「ウェディングプランナーになる」という夢を叶えるべくブライダル関係の専門学校に進み、先月晴れて今の職場に就職できたのだと、本人からLINEをもらった。「そうか……、残念だ。久しぶりに帰ってきたと思ったのになあ」「そうねえ。――でも早いものね。美加ちゃんももう社会人なんて」  ……そっか。私の同級生だった子はほとんどみんな、今は社会に出てるんだ。私みたいに非正規だったりもするけど。「うん……。――あー、でもお昼まではこっちにいるから。アルバム見せてもらって、お昼ゴハン食べてからここ出るね」 親子三人揃ってゴハンを食べるのも久しぶりだ。普段は一人淋しく食事

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-10
  • シャープペンシルより愛をこめて。   6・伝えたい想い Page3

     ――麦茶のグラスを置くと、私はアルバムの山を抱えてソファーに戻った。「重いだろ? 父さんも手伝おうか」「あっ、ありがと。助かるよ」 父にも手伝ってもらって、全部のアルバムをソファーに運び終えた。「ゴメンね、お父さん。狭くなっちゃたけど……」 ソファーの上をほとんどアルバムに占領(せんりょう)されてしまい、端っこに追いやられてしまった父に、私は申し訳ない気持ちになった。「いいって、気にするな。父さんはカーペットの上にでも座ってるから」「うん……、お父さんがそれでいいなら」 この家の主(あるじ)は父なんだけど、本当にいいのかなあ?「――さて、どれから見ようかな」 アルバムは小・中・高校・大学の卒業アルバムからポケットアルバムまであり、卒アル以外はいつ撮(と)られた写真かすぐに分かるように背表紙にラベルシールが貼られている。 ここはやっぱり年齢順でしょうと、私はまず幼い頃の分を開いた。「わあ、懐(なつ)かしいな。私、小さい頃ってこんな感じだったんだー」 お宮参り、お食い初(ぞ)め、初(はつ)節句に七五三。保育園の入園式にお遊戯(ゆうぎ)会。何かの節目(ふしめ)や行事のたびに、私の両親はフィルムのカメラやデジカメで私の写真を撮ってくれていた。「――あ、コレ……」 大学時代の写真は半分以上、潤との2(ツー)ショット写真だ。私が自分のスマホで自撮(じど)りした写真をコンビニプリントしたのだ。 その中には、成人式の時に二人で撮ったものもある。潤と別れる数ヶ月前の写真だ。アイツと二人、こんなにいい表情(かお)をして笑っていられた時期もあったんだなあ……。「――奈美、少しは参考になった?」 大学の卒アルまで見終えると、母がそう訊いてきた。「うん。おかげで私、自分がどんな人間なのか客観的に分かった気がする」 自分自身を第三者的な目で俯(ふ)瞰(かん)する機会なんてめったにないから。この仕事を通じていい機会をもらえたと、原口さんに心から感謝したい。 ――そうだ! ちょうどいい機会だし、両親に改めて訊いたことがないからこの際訊いてみよう!「ねえ。お父さんとお母さんから見て、私ってどんな子だった?」 クッションを抱き締め、私は初めて両親を〝取材〟した。――ノートと筆記具を出そうかとも思ったけれど、両親相手にそこまでするのは大げさかな、と思った

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-11
  • シャープペンシルより愛をこめて。   6・伝えたい想い Page4

    「いや、〝迷惑〟なんてとんでもない。その頑固さがあったから今のお前がいるんだろ? もし父さんの言いなりになってたら、お前は今頃悔(く)やんでたんじゃないか」「……うん、そうかもね」 私は元々、刺激のない毎日も、誰かに使われるのも好きじゃない。性(しょう)に合わないのだ。 普通に就職して会社勤めをしていたら、確かに安定はしていたと思う。毎月キチンとした収入が入り、正規雇用で将来も安泰(あんたい)。 でも私は、誰かのご機嫌(きげん)伺いをしながら退屈な毎日を送るなんてまっぴらごめんだった。やりたいことがあるなら、それを仕事にするのが一番いい。生活は大変だけど、認められた時の喜びは大きいしやり甲斐もある。「私、作家になったこと後悔してないよ。楽しいことばっかりじゃないけど、自分が選んだ道だもん」「そうか。それを聞いて安心したよ。父さんも母さんも、これからも応援してるからな」「そうよー。困ったことがあったら、いつでも連絡してらっしゃい」「うん! 二人とも、ありがと!」 やっぱり、家族が味方っていいな。小説家って孤独(こどく)な職業だけど、こうして支えてくれる人達がいるから「私、一人じゃないんだ」って思える。それってすごくありがたいことだと思う。「――そろそろお昼の準備しなきゃ」 母が壁(かべ)の時計を見て言った。時刻は十二時五分前。あれだけのアルバムを見て、両親に話を聞いていたら、もうそんな時間になっていたのだ。「チャーハンとスープでいい?」「うん。――あ、手伝うよ」 母と二人で台所に立つのもお正月以来だ。でも、独(ひと)り立ちしてからずっと自炊をしているから(たまに手抜きで外食やテイクアウトも利用するけど)料理の腕は日に日に上達している……はず。 親子三人で食べる久しぶりのゴハンは、楽しい両親のおかげで賑(にぎ)やかだった。 お昼ゴハンが済むと、私は後片付けを手伝ってから実家を後にした。「今日はありがと。慌ただしくてゴメンね。またゆっくり来るから」 出がけに玄関まで見送ってくれた両親にお礼を言うと、母に逆に謝られた。「こっちこそ、大した手伝いもできなくてゴメンね。美加ちゃんによろしく伝えてね」「うん。伝えとくよ。じゃあまたね!」

    ปรับปรุงล่าสุด : 2025-03-11

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page18

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page17

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page16

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page15

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  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page14

    「――どうでもいいけどさ、奈美ちゃん。早くお弁当(それ)食べちゃわないと、お昼休憩終わっちゃうよ?」「えっ? ……ああっ!?」 壁の時計を見たら、十二時五十分になっている。ここの従業員のお昼休憩は三十分と決まっているので、残りの休憩時間はあと十分くらいしかない! 慌ててお弁当をかっこみ始めた私に、由佳ちゃんがおっとりと言った。「奈美ちゃん、……喉つまらせないようにね」   * * * * ――その日の終業後。「店長、お疲れさまでした! 由佳ちゃん、私急ぐから! お先にっ!」 清塚店長と由佳ちゃんに退勤の挨拶をした私は、ダッシュで最寄りの代々木駅に向かった。 原口さんは、近石プロデューサーが何時ごろにパルフェ文庫の編集部に来られるのか言ってくれなかった。電車に飛び乗ると、こっそりスマホで時刻を確かめる。――午後四時半。近石さんはもう編集部に来られて、原口さんと一緒に私を待ってくれているんだろうか? 私は彼に、LINEでメッセージを送信した。『原口さん、お疲れさまです。今電車の中です。近石さんはもういらっしゃってますか?』『いえ、まだです。でも、もうじきお見えになる頃だと思います』 ……もうじき、か。神保町まではまだ十分ほどかかる。先方さんには少し待って頂くことになりそうだ。私が編集部に着くまでの間、原口さんに応対をお願いしようと思っていると。 ……ピロリロリン ♪『ナミ先生がこちらに着くまで、僕が近石さんの応対をします。だから安心して、気をつけて来て下さい』 彼の方から、応対を申し出てくれた。『ありがとう。実は私からお願いするつもりでした(笑)』 以心(いしん)伝心(でんしん)というか何というか。こういう時に気持ちが通じ合うって、なんかいいな。カップルっぽい。……って、カップルか。 ――JR山手線(やまのてせん)の黄緑色の電車はニヤニヤする私を乗せて、神保町に向かってガタンゴトンと走っていた。   * * * * ――それから約十五分後。 ……ピンポン ♪ 私は洛陽社ビルのエレベーターを八階で降り、猛ダッシュでガーネット文庫の編集部を突っ切っていった。「おっ……、遅くなっちゃってすみません!」 奥の応接スペースにはすでに原口さんと、三十代半ばくらいの短い茶髪の爽やかな男性が座っている。私は息を切らしながら、まずはお待た

  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page13

    「どしたの? 奈美ちゃん」「うん……。彼からメッセージが来てるの。えーっとねえ……、『お疲れさまです。このメッセージを見たら、折り返し連絡下さい』だって」 LINEアプリのトーク画面に表示されている文面はこれだけで、肝心(かんじん)の用件は何も書かれていない。「何かあったのかなあ? 返信してみたら? 『どんな用件ですか?』って」「返信より、電話してみるよ。その方が早いし」 私は履歴から彼のスマホの番号をタップし、スマホを耳に当てた。『――はい、原口です』「巻田です。なんかさっき、メッセージもらったみたいなんで折り返し電話したんですけど。たった今気がついて」『ああ、そうなんですか。――今日はお仕事ですか?』「はい。今はお昼休憩中なんですけど。――何かあったんですか?」『はい。えーっと、映画プロデューサーの近石(ちかいし)さんという方から、「巻田先生にお会いしたい」ってお電話を頂いて。今日の夕方に編集部でお会いすることになったんで、連絡したんです』「映画プロデューサーの近石さん……、あっ! もしかして、近石祐司(

  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page12

     ――数日後。今日のバイトは久々に由佳ちゃんと一緒のシフトになった。 新作の原稿も順調に進んでいるし、原口さんとの関係も良好。ここ最近の私は公私(こうし)共(とも)に充実している感じだ。「――客足も落ち着いてきたね。二人とも、お昼休憩に行っておいで」 正午を三十分ほど過ぎた頃、清塚店長が私達アルバイト組に休憩をとるように言ってくれた。「「はい。行ってきます」」 休憩室の机の上にお弁当を広げ、由佳ちゃんとガールズトークをしながらのランチ。この日も当然、そうなるはずだった。……途中までは。「――そういえば、最近どうなの? 五つ上の編集者さんの彼氏とは」 由佳ちゃんは最近、私の恋愛バナシにご執心(しゅうしん)みたいだ。「うん、順調だよ。――由佳ちゃんの方は?」 私はお弁当箱の中の玉子焼きをお箸でつまみながら答え、今度は私から由佳ちゃんに水を向けた。「うん……。彼とはねえ、最近連絡取ってないの」「えっ? ケンカでもしたの?」 少し前まで幸せそうだったのに。予想外の答えに私は目を丸くした。「ううん、そうじゃないんだけどね。彼、最近忙しいみたいで……」 由佳ちゃんの彼氏は中学校の教師で、私の予想では多分三年生を受け持っている。「そっか……。でも、中学校の先生だったら今ごろはきっと、ホントに忙しいんだろうね。文化祭の準備とかテストとかで」 私はさり気なくフォローを入れる。それに、三年生の担任だったりしたらきっと、生徒の進路の相談に乗ったりもしているんだろうから、さらに忙しいだろうし。「少し時間が空いたら、彼からまた連絡くれると思うよ。だから、彼のこと信じて待つしかないんじゃない?」「……そうだね。あたし、彼のこと信じる」 さっきまでちょっと元気のなかった由佳ちゃんは、食べかけでやめていたコンビニのエビマヨのおにぎりをまたモグモグし始めた。「――にしても、奈美ちゃんはいいなあ。仕事でも私生活(プライベート)でも、大好きな人と一緒なんでしょ? 『離れたらどうしよう?』なんて心配はなさそうだし」 冷たい緑茶でおにぎりを飲み下した由佳ちゃんが、羨ましそうに私に言った。「うん……、まあね。逆に言えば、プライバシーもへったくれもないってことになるんだけど。別に私は困んないし」 むしろ四六時中(しろくじちゅう)彼と一緒にいられて幸せだから、私はそ

  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page11

       * * * * ――翌朝、原口さんはバイトに出勤する私に合わせてわざわざ早く起きてくれたので、一緒に朝ゴハンを食べた。今日のメニューは白いゴハンに焼き鮭(ざけ)、キュウリとナスの浅漬け、そしてきのことカボチャのお味噌汁。秋が旬の食材をふんだんに使ったメニューだ。 たまには洋食の朝ゴハンにしようかとも思うのだけれど、原口さんは和の朝食がお好みらしい。「――そういえば、ナミ先生って和食以外もよく作るんですか?」 ゴハンをお代わりしながら、彼が訊いた。……あ。そういえば彼がウチで食べる料理ってほとんど和食だ。洋食系のメニューって食べてもらったことあったっけ?「うん、作りますよ。中華とかカレーとかも。でも、さすがにハヤシライスは作ったことないなあ」 昨日のデートで、彼と一緒にカフェで食べたハヤシライスはおいしかった。……でも、自分で「作ってみたい」とまでは思わない。私は創作の面では結構攻めるタイプだと思うけれど、どうも他の面では守りに徹(てっ)するタイプみたいだ。 そういえば恋愛でもそうだった。原口さんのことが好きだと気づいた時だって、自分からはグイグイ行かなかった……と思うし。「――僕、ナミ先生が作ってくれる和食大好きなんですけど。たまには洋食系のメニューも食べてみたいなあ……なんて。……すみませ

  • シャープペンシルより愛をこめて。   後日談・二ヶ月後…… Page10

       * * * * ――結局、彼はやっぱり泊っていくことになった。 洗い物を済ませてから二人で交代に入浴し、寝室で甘~~い時間を過ごしたら、私は無性に書きたい衝動(しょうどう)にかきたてられた。「――ゴメンなさい、原口さん。私、これからちょっと仕事したいんですけど。机の灯りつけてても寝られますか?」 私が起き上がると、彼は「仕事って、執筆ですか?」と訊き返してくる。「そうです。眩しいようだったら、ダイニングで書きますけど」「いえ、僕のことはお気になさらず。……ただ、明日出勤でしょ? あんまり遅くまでやらないようにして下さいね」「うん、ありがとうございます。キリのいいところまでやったら、適当に寝ます。だから気にせず、先に寝てて下さい」 私はベッドから抜け出して、部屋着の長袖Tシャツの上からパーカーを羽織り、机に向かった。書きかけの原稿用紙を机の上に広げ、シャープペンシルを握る。 ノートパソコンは、相変わらずネットでしか稼働(かどう)していない。タイピングの練習は、時間が空いた時だけやっている。でも、パソコンで執筆する気にはやっぱりなれない。 原稿を書きながら、数時間前に観た映画のラブシーンとついさっきまでの彼との濃密(のうみつ)な時間を思い出しては、一人で赤面していた。私が書いている恋愛小説は濃厚(のうこう)なラブシーンが登場するようなものじゃなく、主にピュアな恋愛を描いているものがほとんどなのだけれど。 私の恋は、小説やTVドラマや歌の世界を地(じ)でいっている気がする。 潤のことも、もちろん本気で好きだった。だから、「小説家なんかやめろ」って言われてすごく傷付いたんだと思う。「どうして好きな人に応援してもらえないの?」って。 でも、原口さん相手ほどは燃えなかったなあ。こんなにどっぷり好きになった相手は、多分彼が初めてだ。そして、ここまで愛されているのも。 だって彼は、私のことを丸ごと愛してくれているから。私のダメなところも全部認めてくれて、決して貶さないし。……こんなに出来た彼氏は他にいないと思う。 ――集中してシャーペンを走らせ、原稿用紙十五枚を一気に書き上げると、時刻は夜中の十二時過ぎ。いつの間にか日付が変わっていた。「ん~~っ、疲れたあ! そろそろ寝よ……」 私はシャーペンを置き、思いっきり伸びをした。ふと、後ろのベッド

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